過去へのとらわれ
〜車内で泣いていた女性の印象〜
あれは、もう何年前になるでしょうか。
家に帰るために乗り込んだ電車で、
扉の前で座り込んで泣いている人を見かけました。
彼女の着ているのは、白いつなぎの作業服。
手には着替えどころか、小さなバックひとつ持っていません。
電車が走り出してから、
僕は記憶を数秒間戻し、
彼女が僕と一緒にこの電車に乗り込んでいたのを知りました。
彼女は顔を隠すようにして泣いていたので表情は見えませんでしたが、
腕を強く抱えるように握って痛みに耐えているような仕草や、
自分がまわりにどう映るかなんて気にする余裕さえない様子から、
彼女が感じている悔しさが伝わってきました。
「がんばったのに。」
「ばかやろう。」
悔しさを隠さないその潔さは、まるで映画を見ているようでした。
思い出した。
彼女を見かけたのは5、6年前のことでした。
なのに、彼女が首や肩を真っ赤にそめていた、
その色まではっきりと思い出すことができます。
〜過去に経験した同じような出来事が、あなたに印象づける〜
たぶん、自分の努力が認められなくてくやしい思いをしたことがない人は、
あんな姿で泣いていた彼女を見ても、
何年も記憶に残ってしまうことはないと思います。
身をもって経験した人は、
自分の記憶の中でそれを繰り返してしまう。
過去へのとらわれ。
過去に経験した恥ずかしい思いや悔しい思いが、
ときどき思い出されては苦々しい気分になりますよね。
ウソつきと呼ばれ、教室で泣きべそをかいた人は、
疑いの目を向けられることが人一倍つらいはず。
相手がウンと言うまで自分の正しさを主張するかもしれません。
満たされなかった思いを満足させたいのです。
そんなようなことに気づいていれば、
あなたをうんざりさせていた人を理解できるかもしれませんね。
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